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● 平和町アニマル探偵団 --- *- 浦島タルト?のお話。 -*  ●

 むかしむかし、一人の漁師がおった。
 ある日漁師は、浜辺で子供たちにいじめられていたカメを助けた。
 するとカメはお礼に漁師を竜宮城に招待した。
 そこで楽しいひとときを過ごした漁師は、帰り際に竜宮城の主・乙姫からお土産に玉手箱をもらった。
 竜宮城から帰った漁師は、すっかり様変わりした村の様子に驚いた。
 竜宮城と外の世界とでは、時間が流れる早さがまったく違ったのだ。
 途方にくれた漁師は、玉手箱を開けてみた。
 すると白い煙がモクモクとわき上がり、漁師はおじいさんになってしまいましたとさ……。



「『浦島太郎』か」
「知ってる?」
「あぁ、竜宮城に行ってじいさんになっちまうアレだろ」

 かなりいろんなトコが省かれてるけど、まぁそんな感じかな……。

 パックの言葉に苦笑いしながらボクは頷いた。

「『浦島太郎』がどうかしたのか?」

 首をかしげたのはクロスケ。
 ボクは頷いて話し出した。

「実はこのお話、昨日マチばあちゃんにおしえてもらったんだ。それで、どうしても気になることがあって……」
「気になること?」

 浦島太郎にか? とパックも首をかしげた。

 ボクは二人を交互に見ながら、真剣に訊ねた。

「どうしてお水の中でゴハンが食べられるの?」

 あれ?
 パックとクロスケはぽかんと口を開けてボクを見てる。どうしたのかな?

「あー、それはな、乙姫の不思議パワーっつーか……てか、気になるのソコかよ……」
「まぁ、タルトだからな」

 がっくりと肩を落とすパックとそれをなぐさめるクロスケ。
 あれ? ボク、何か変なこと聞いた? だって、海の中でご馳走食べたんだよ? 不思議じゃない?

「あー、カメに聞いてみればいいんじゃねぇか?」
「そっか」

 太郎さんを竜宮城に連れていったのはカメさんだもんね。カメさんに聞けば分かるのか。

 うん、と頷いたとき、どこかから泣き声が聞こえてきた。

「どうしたのかな」
「あっちだな」

 ボクたちは急いで声の聞こえる方に走っていった。


「えーん、やめてよぉ」
「きゃはは、コイツ泣いてるー」
「ウケるんだけどー」

 着いてみれば、見知った顔がいた。

「あいつらっ」
「また悪さをしているのか」
「ひどいよ」

 そこにいたのは、二匹のネズミ。
 前に商店街でイタズラをしてみんなを困らせた、イタズラっ子。
 また誰かを困らせているみたい。早く止めなくちゃ!!

「君たち、やめなよ」
「泣いているだろ、それくらいにしておけよ」

 ボクとパックが飛び出すと、ネズミたちはとっても嫌そうな顔をした。

「げっ、またアンタたち」
「ジャマしないでよねー」
「ウザいんですけどー」

 うわ、今のはさすがにカチンときた。
 二匹とも、全然反省してない。
 すると、ボクたちの背後から悠然とクロスケが出てきた。

「また会ったな、食料ども」
「ぎゃーっ、カラスーっ!!」

 ……一目散。
 クロスケ、すごい!!

「君、大丈夫?」

 ボクたちはネズミがいじめていた子を覗き込んだ。

「は、はい……」

 いつの間にか隠れていた石の影からビクビクと出てきたのは……。

 小さなミドリガメ。

「ありがとうございました」

 カメさんはぺこりとお辞儀をした。

「ケガはない?」
「はい」

 カメさんはにっこりと頷き、ボクたちはホッとした。

 ん? この展開、どこかで……?

「あの、ぜひお礼をさせて下さい」
「え? そんな、別にいいよ」
「大したことはしていない」

 あわてて首を横に振るボクとクロスケに、カメさんは、ぜひ、と迫ってきた。
 何だか申し訳なくて困っていると、ポツリとパックが言った。

「……浦島太郎」

 そっか!!
 浦島太郎だ!!
 何か、あのお話とそっくりな展開になってる!!
 じゃあもしかして、竜宮城に行けるのかな!?

 ボクは目を輝かせて頷いた。

 気になってることの答えが分かるかもしれない!!


 カメさんに連れられてやって来たのは、とある池。

 あれ? 海じゃないの?
 首をかしげると、クロスケが言った。

「……海ガメじゃないからな」

 すると、カメさんがボクたちを池のそばに呼んだ。

「父と母がお礼を言いたいそうです」

 池の中から出てきたのはカメさんよりも二回りくらい大きいカメさん。

「娘がお世話になりました」
「ありがとうございます、世の中にこんな親切な方々がいるなんて!!」

 あ、女の子だったんだ……。

「カメ代、お礼はちゃんと言ったのか?」
「はい、お父様」
「皆さん、何もない所ですが、ゆっくりしていって下さいね」

 カメ代さんのお母さんが言った。
 戸惑っていると、池の方からわらわらと声が聞こえてきた。

 ボクたちは池を見て…………凍りついた。

 そこには、数十匹のミドリガメ。

「あ、わたしの兄弟たちです」

 にこやかに兄弟を紹介していくカメ代さん。
 お、覚えきれないよ……。

 それから一時間近く兄弟の紹介は続いた……。


 それからボクたちは、更にもてなそうとするカメさんたちの誘いを何とか断って、帰り道を歩いていた。

「あ、水の中でゴハン食べられるのか、聞くの忘れちゃった」
「タルト、その疑問は、てか浦島太郎は忘れろ」
「そうだな、それがいい」
「うん、そうする……」


 なんだかぐったりしながらボクたちはそれぞれの家に帰った。
 それからしばらくの間、カメさんたちの名前が頭から離れなかったことは……言うまでもないよね……。
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