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● 平和町アニマル探偵団 -*-コワモテなかよし大作戦!!後編-*-  ●

 シェパードのルイズ。
 顔は怖いけど、本当は面倒見のいい、優しい性格。
 どうすればみんなわかってくれるんだろう。

 ボクはうーん、と考えた。
 そりゃあボクも最初はその迫力にびっくりしたけど、実際話をして全然違うなって思った。

 だったら、ほかのみんなもルイズと話をしたら、仲良くなれるんじゃないかな。

 そう思ったボクは、まずは全員と仲良しのモールに話をしてみることにした。

 それから会話は進み……。

「へぇ、そうなんですか。うちももうすぐお花見行くんですよ」
「隣町に名所があるらしいな」
「あ、隣町って言っていたから、もしかしたらそこかも」

 うん、いい感じ。
 まだちょっとお互いにぎこちないけど、とりあえず話が弾んでるみたい。

 ボクはそれからさりげなくみんなを呼び寄せて、一匹一匹ルイズと話をするようにした。


 やっぱりみんな最初はぎこちなかったけど、帰る頃には何となくほんわかした雰囲気になっていた。
 ルイズの顔も、どことなくうれしそう。

 よし、とりあえずみんなにルイズが怖い犬じゃないって分かってもらえたかな? 次はルイズからみんなの中に入っていけるように……。


 そうワクワクしながら考えていた時だった。

「あぁっ」

 男の子が叫び声を上げた。
 ……あの子は、ルイズのご主人様?

 男の子の先にはルイズが困ったようにフェンスの周りをウロウロしている。
 何かあったのかな?
 ボクはあわててルイズのところにかけよった。

「どうしたの?」
「いや、さっきご主人様がボールを投げてくれたんだが……」

 どうやら投げる力が思ったより強くて、フェンスを越えて、裏の原っぱに落ちちゃったみたい。

「わぁ、大変!!」

 ボクはルイズの隣で目を凝らしてみたけど、ボールらしきものは見つからない。
 すると、ルイズのそばにルイズのご主人様が近寄ってきた。

「どうしよう……、ごめんね、ルイズ」
「くぅん」
「ルイズの宝物が……」

 宝物……。
 ボクはその言葉を聞いて、決めた。

「ルイズ、そのボールって、どんなの?」
「え? ……青いゴムボールだが……」
「わかった!!」

 ボクは返事をしながらくるりと振り返った。
 そのまま数歩戻って、またフェンスを振り返る。

「おい、タルト?」

 ボクは返事をしないで、息を整えてから走り出した。

「ちょっと待ってて!!」

 後ろ足に力をためて、そのまま思い切りジャンプ!!
 少しだけ余裕でボクの二倍近くあるフェンスを飛び越えた。

 後ろで、ミカちゃんがボクの名前を大きな声で呼んでるけど、ボクは着地した勢いのまま草むらに入っていった。

 ごめんね、ミカちゃん。でも、暗くなったら人間には探せないから!!

 鼻をふんふんと鳴らしながら草むらに顔を突っ込んだボクを見て、ルイズは茫然としてる。その隣でルイズのご主人様がぽつりと呟いた。

「あの子……ボールを探してくれてるの?」
「多分……ね」

 いつの間にか隣に並んだミカちゃんは、困ったように笑った。

 しばらくボクを眺めていたルイズは、突然フェンスから距離をとった。

「ルイズ!?」

 男の子のびっくりしたような声が聞こえて、ボクはドッグランを振り返った。

「おれも行く」

 そう言って、ルイズはフェンスを軽々と飛び越えていた。

「タルト、おれはあっちを見てくる」
「うん!!」

 ボクたちは、匂いを探して草むらに入っていった。

 身体中泥だらけでびしょびしょだ。昨日、雨降ってたからなぁ。

 ぶるぶると体を振るうと、水滴が雨みたいに飛んだ。


 しばらく探しても、なかなかボールは見つからない。
 時間はもう夕方で、辺りは薄暗くなってる。
 ふと、ルイズが近づいてきた。

「……もういい、タルト」
「諦めちゃダメだよ。大事なものなんでしょ?」

 諦めモードになって弱気に言うルイズを励ましながら、ボクは鼻を利かせ続けた。

「だが、もう暗くなってきたし……」

 そうルイズが言いかけたとき。
 ボクの鼻がある匂いをとらえた。

 この匂い……!!

 しばらくその辺りを探してみると、ふいにボクの鼻先に何かが当たった。
 前足でそれを引き寄せてみる。

 すると、ボクの足元にころん、とボールが転がってきた。
 青い、ゴムボール。

「……あったぁ!!」

 ボクの声を聞いて、ルイズがあわてて駆け寄ってきた。

「これだよね」
「ああ、これだ!! まさか、本当に見つかるなんて……」

 
 それからボクたちはドッグランに戻った。
 ルイズは大切そうにボールをくわえている。
 ルイズ、うれしそう。見つかってよかった!!

 ルイズのご主人様も、「ありがとう」と言って、ボクを抱きしめてくれた。
 えへへ、なんだかくすぐったいや。

 時間は夕方。もう帰らなくちゃ。

 帰り支度をしているミカちゃんの隣のボクに、ルイズが話しかけてきた。

「今日はありがとう、タルト。でも、どうしておれのために……」
「そんなの決まってるよ。友だちだから、だよ!!」

 ボクがそう言うと、ちょっとびっくりしたような顔をしてから、ルイズは今日一番の笑顔になった。

「ああ!!」


 それからボクとミカちゃんは家に帰った。怒られるかな、と思ったけど、ミカちゃんはボクを優しく撫でて褒めてくれた。
 それが、最高のごほうび!!



 おまけに。
 次の日曜日もボクとミカちゃんはドッグランに行った。
 先に来ていたルイズは、すっかりみんなと打ち解けて仲良く追いかけっこをしてる。
 ボクが来たことに気づくと、ルイズは少しだけ複雑そうな顔で近寄ってきた。

「どうしたの?」
「いや、それが……」

 ルイズがボスと呼ばれることはなくなった。その代わりに……。

「兄貴ー!!」

 ……って呼ばれるようになった。

 ……あれ?

  おわり

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