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● 平和町アニマル探偵団 --- つながるお話。 side. タルト ●

 10月15日・PM3:00。


「ここにもいないな」

 ボクはため息をついた。

 ボクがいるのは商店街近くの林の中。
 ここにはパックのねぐらがある。

 ボクは、パックを探していた。
 手伝ってほしいことがあったからだ。

「クロスケも裏山にいないし……。別の山にいるのかなぁ」

 二人ともいなくて、ボクはがっくりと肩を落とした。

 落ち込むボクの足元に、小さな影が駆け寄ってきた。

「タルトお兄ちゃん、パックお兄ちゃんいないの?」

「うん、ごめんね、イチ」

 そう謝ると、イチは慌てて首を横に振った。

「ううん、大丈夫!! ぼく、頑張って探すよ」

「うん、ボクもがんばるね」

 そう言うと、イチは不安そうにしながらも嬉しそうに笑った。

 パックとクロスケの力は借りられないから、ボクが何とかしないと!!


 ボクとイチはパックのねぐらを出て、とりあえず商店街に向かうことにした。
 
 今ボクたちが何をしているのかというと……。


 10月15日・PM1:30。


 お昼ごはんを食べた後、お庭でお昼寝をしていたボクは、小さな声で名前を呼ばれていることに気づいた。
 声の聞こえる方に向かうと、そこにいたのは子猫。
 その子を知ってるボクは首をかしげた。

「イチ? どうしたの?」

「タルトお兄ちゃん、お願いしたいことがあるんだけど、いい?」

 イチはどこか不安そうにボクに訊ねた。

「うん、いいけど……。いったい何があったの?」

 いつも元気なイチの様子が変だ。きっと、何が大変なことがあったんだ!!

 気を引き締めたボクに、イチは言いづらそうに事情を話した。

「犬に追いかけられて……。それは大変だったね」

「うん……。それでミィとフゥとはぐれちゃったんだ。ミィは追いかけられたときに転んで怪我しちゃって……。とっても心配なの。だからね、タルトお兄ちゃんにミィとフゥを探してほしいの」

「わかった、一緒に探すね。とりあえずパックとクロスケにも手伝ってもらおう」


 ……こんな事情でパックとクロスケを探してたんだけど、二人はつかまらない。

 仕方なくボクとイチだけでミィとフゥを探すことになった。


 10月15日・PM3:30。


 商店街で一通り話を聞いてみたけど、ミィとフゥを見たっていう話しは聞かなかった。

 ボクとイチは商店街を出て、住宅街で話を聞いてみることにした。


 話を聞き始めて30分後、ミィを見たという飼い犬に出会った。

「散歩中だったんだけど、この先の橋で見たぞ。怪我してるみたいだったけど……」

「間違いないよ、ミィだ!!」

 嬉しそうにイチが声を上げた。
 でも、その飼い犬の次の言葉を聞いて、途端に顔色が悪くなった。

「でも、見かけたあとすぐに人間がきて、その子猫を連れていったぞ」

「えっ? ミィ、人間に連れていかれちゃったの?」

 ボクはイチの前に出て、その犬に訊ねた。

「ミィがどこに連れていかれたのか知ってる?」

「どこかは分からないけど……。その人間のことなら知ってる。おれが行く動物病院の先生だからな。その病院にいるんじゃないか?」


 親切に病院の場所を教えてくれたその犬にお礼を言って別れたあと、ボクとイチは病院に向かった。

 その病院は橋からすぐのところにある、白い小さな建物だった。

 玄関のすぐ横に大きなガラス窓があって、中に入れないボクたちは、そこから中を覗いた。

「タルトお兄ちゃん、見える?」

「うーん、見えないなぁ」

「あれ、これは可愛いお客さんだな」

 必死に背伸びをして中を覗いていたボクたちは、後ろに人間がいたことに気づかず、声をかけられて飛び上がった。

 振り返ると、若い男の人。この人が、お医者の先生かな?

 ボクはイチを連れて玄関の前に立って、扉をカリカリと引っかいた。

「ん? 中に入りたいのかい? わかった、今開けるよ」

 するとその人は笑いながら扉を開けてくれた。

 わぁ、いい人だ。

 ボクとイチはおっかなびっくりその人に続いて中に入った。

「せっかくのお客さんだ。今ミルクでも入れるね」

 その人はそう言って、奥に引っ込んだ。その隙にボクとイチは受付の中に入った。

 診察台の床の上には大きな檻と小さなケージが置かれている。中にいたのは……。


「パック!?」

「ミィ!!」

「あれ、タルト?」

「イチ兄ちゃん!!」

 ボクとイチは二人に駆け寄って再会を喜んだ。

「ミィが見つかってよかったけど、パックはどうしてここにいるの?」

「オレも怪我してここの獣医に連れて来られたんだよ」

 そう言われて、ボクはパックの足に巻かれた包帯に気づいた。

「大丈夫なの?」

「大したことねーよ」

 ふん、と鼻で笑うパックに、ボクは苦笑い。きっと強がりだ。

 そこへ、先生が戻ってきた。

「あれ、君たちお友だちかい?」

 先生はミルクの入った皿を床に置いて首をかしげた。

 イチは必死にミィのケージを引っかいてアピールしてる。

「ああもしかして兄弟なのかな? 待ってて、今開けようね」

 先生はイチの頭を優しく撫でて、ミィのケージを開けた。
 途端に飛び出したミィは、イチに擦り寄って甘えてる。

 こうして、ボクたち4人は無事に再会したんだ。
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