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● 平和町アニマル探偵団-*-イタズラしたのは……?のお話。-*-  ●

「どうだ、タルト。いたか?」

 ボクは訊ねてきたパックにフルフルと首を横に振り、パックは渋い表情でううんと唸った。

「いったいどこに隠れたんだぁ?」
「隙間に入られちゃったら、ボク達じゃ見つけられないね」

 ため息をついたボクに、空から声が降ってきた。

「駄目だな、見つからない。もうこの辺りにはいないんじゃないか?」

 クロスケが近くに降りながら言った。
 クロスケの言葉に、ボクとパックも頷いた。

「そうだね。違うところも見てみよう」
「まったく、面倒起こしやがって……」

 パックがイライラと言い、ボクとクロスケもため息をついた。


 ボクたちは今、商店街にいる。
 商店街の古株、猫のマチばあちゃんの頼みなんだけど、いったい何を頼まれたかというと……。


「イタズラ事件?」
「あぁ、アレか」

 パックは興味なさそうに言ったけど、ボクは驚いた。ふだん住宅街で過ごしているボクには、初耳だ。

 びっくりしているボクに、マチばあちゃんは重々しく頷いた。

「そうなんだよ。商品の袋が破られたり並べてあったものが落とされたりしているのさ」
「ひどいね」

 顔をしかめたボクに、クロスケも頷いた。

「イタズラにしても度が過ぎているな。誰がこんなことを?」

 クロスケに訊ねられたマチばあちゃんは、少し困った顔をした。

「若いやつらを使って追ってはいるんだが、すばしっこくてね」
「猫くんたちでも捕まえられないなんて、いったい犯人はだれなの?」

 びっくりして訊ねると、マチばあちゃんは忌々しそうに言った。

「ネズミだよ」
「ネズミ?」

 ボクは目を瞬かせた。パックとクロスケも首を傾げている。
 ネズミといえば、猫が天敵のはず……。
 マチばあちゃんは戸惑っているボクたちに気づいて言った。

「言っただろ。とにかくすばしっこいんだよ。色んな隙間に入りこんじまって、追いきれないのさ」
「そうなんだ……」

 確かに、色々なお店がある商店街には、隠れるところもいっぱいだ。
 納得……と頷いていると、さて、とマチばあちゃんが言った。

「その件でお前たちに頼みがあるんだ。ネズミを捕まえるのを手伝ってほしいんだよ」

 ボクたちはえっ、と声を上げた。

「何でボクたち!?」
「お前達には立派な鼻があるじゃないか。便利なことに、空も飛べるだろ?」
「そりゃあ……」
「じゃあ頼んだよ」

 言うだけ言って、マチばあちゃんはスタスタその場を去ってしまった。
 残されたボクたちは、全員ぽかんとマチばあちゃんの後ろ姿を見送っていた。


「仕方ねぇ、こうなったらやるしかないな」

 かなり投げやりに言ったパックに、クロスケがため息をついた。

「しかし、どうやって捕まえるんだ?」
「とりあえず、ネズミの匂いを探してみよう」



 それからボクたちは何とかネズミの匂いを見つけて、それを頼りに商店街中を調べてみることにした。
 いろんなところを探してみたけど、それらしいネズミはいない。

 他の場所も探してみようと商店街の出口まで来たとき、パックがフンフンと鼻を鳴らした。
 あれ?この匂い……。
 気づいたボクも顔を上げると、パックと目が合った。

 ボクたちはすぐに地面に鼻を近づけて探し始めた。
「おい、あったぞ!!」

 パックが大声を出した。 
 足元には狭い排水溝の隙間。よく見ると、商店街の外に向かって小さな足跡が延びている。
 濡れた足跡は、まだ付いてから時間があまりたってないみたい。
 ボクたちは急いで足跡を追った。


 たどり着いたのは小さな公園の茂みの中。
 静かに近づくと、声が聞こえてきた。

「猫も大したことないじゃん」
「見たか? さっきのあいつらの顔」
「笑えたー」

 そっとのぞくと、灰色のネズミが二匹。

 今日のイタズラの話をしているのか、大笑い。
 みんなに迷惑かけて楽しんでるなんて……。
 ボクがムッとしてると、隣のパックとクロスケもおんなじ表情だ。

 とにかく捕まえないと!!


「とりあえずメシにしようぜー」
「そうだな」

 イタズラついでに盗んできた食べ物にかじりつこうとした瞬間――。

「見つけたっ」
「逃がさねーぞっ」
「観念しろ」

 ボクたちは三方向から飛び出して、ネズミの周りをぐるりと囲んだ。
 ネズミはアワアワとボクたちを見回してる。相当びっくりしたみたい。

「最近、商店街でイタズラしてるの、君たちだよね」
「なんだおまえらっ」
「お前達を捕まえてくれって頼まれたんだよ」
「もう逃げ場はない。大人しく一緒に来て謝れ」

 ボクたちの言葉に、ネズミたちはあからさまにため息をついた。

「そんなに怒るなよー」
「たかが可愛いイタズラじゃん」

 まったく謝ろうとしないネズミたちに、ボクたちは呆れた。全然反省する気がないみたい。
 これは謝る気が起こるようにするしかないかな?

 パックを見ると、すぐに頷いてわざとらしく言った。

「なんだお前ら、メシの途中か」
「そうそう」
「分かってるならさっさと消えてよ」

 べー、とネズミたちは舌を出した。
 
「おいクロスケ。腹減らねぇか?」
「そうだな……」

 パックの言いたいことに気づいたクロスケは、ちらりとネズミたちに目を向けた。

「そういえば朝から何も食べていないな」
「ふーん……。なぁ、カラスって何食べるんだ?」
「何でも食べるぞ。……例えば、ネズミ、とか」

 びくーっ、とネズミたちは飛び上がった。クロスケはニヤリと笑い、じりじり詰め寄っていく。

「今日は久しぶりにご馳走にありつけそうだな」

 鋭いクチバシを近づけたところで――。

「ごっ、ごめんなさーいっ」
「あ、あ、謝りますーっ」
 ネズミたちは半泣きだ。
 ……ちょっと可哀想だったけど仕方ないよね。


 それからボクたちはネズミを連れて商店街に戻った。
 彼らが相当ご立腹のマチばあちゃんたちに謝るのを見届けてから、ようやく家に帰った。

 もうクタクタ……。

 こんな事件には、二度と遭いたくないなぁ。

 イタズラネズミにはご用心、だね。
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